日常生活動作(ADL)という指標は、介護業界においては非常に重要であると考えられている。なぜなら、「排泄や移動、食事といった行動がままならない」という状況は、介護を受ける側にとって大変なストレスになってしまう恐れがある。また、自分の意志で自由に行動できる状態を継続することで、生活の質(QOL)も高めることにつながるからだ。
QOLの定義は「人間らしく、満ち足りた生活をしているかを評価する指標」である。どのような状態を満ち足りていると評価するかは、個人によって異なるとはいえ、ADLが低下している人は、自然とQOLも下がってしまう傾向にある。物や金銭的な支援も重要であるが、個人のQOLを高めるために、ADLを向上させたり、維持させたりするという考え方は、人間らしい暮らしを送る際には欠かせない。
例えば、ADLの一つとして挙げられる排泄行為の場合、「誰かに見られている状態では行いたくない」や「自分の意志で一人で行いたい」と希望する人は多数派を占めると想定される。仮に車椅子での移動を余儀なくされる健康状態であっても、「手すりさえあれば車椅子から便座まで自力で移動して、排泄ができる」という状態を維持できることは、QOLの低下を食い止められると考えられる。
このような理由から、生活環境を整えたり、リハビリを導入したりすることで、ADLの低下を食い止めることはとても重要だ。そのため、高齢者の自立を促す介護業界では、ADLの評価をとても重要視している。