介護現場で耳にする「ADL」について

介護現場で頻繁に耳にする言葉のひとつに「ADL」がある。これは、「activities of daily living」の頭文字を取ったものであり、日本語では「日常生活動作」と訳される。日常生活を送るうえで欠かすことのできない基本動作を意味する言葉だ。具体的には、食事、排泄、更衣、入浴、移動等の動作を指している。

ADLは、高齢者や障害者が、どの程度自立した生活を送ることができるかの評価指標として用いられる。例えば介護保険の要介護認定においては、ADLのそれぞれの動作を自立から全介助まで、いくつかの段階に分けて評価する。そして、その評価を参考にして、要介護度が決定されるのだ。

また、ADLは、要介護者がどんなことをどれくらいできないかという視点だけでなく、何をどれくらいできるのかという視点でも使用される。この使い方によって、高齢者や障害者の残存能力に着目することができる。例を挙げると、ある高齢者について、自分では服のボタンを留められないという見方がされるとしよう。しかし、視点を変えてみると、自分で服を羽織ることはできるし、ボタンのない服なら着ることができるという、その人の持つ力(ストレングス)に着目した見方が可能になるのだ。

さらに、要介護者の自立を推し量る際に、「IADL」という言葉もある。これは「Instrumental Activity of Daily Living」、日本語では「手段的日常生活動作」と訳され、ADLより複雑で高次な動作のことを指す。具体的には、家事や金銭管理、外出時の移動や買い物等などのことだ。高齢者や障害者の生活における自立度の評価には、ADLと共に、IADLも考慮することが大切だ。⇒関連のあるサイト:http://adl-knowledge.com